The Black Pharaohs
古代エジプトの歴史の中に、「ブラックファラオ」と呼ばれる異国から来た黒人の王が君臨した時代があったことを知っていますか?その王たちは現在のスーダンにあたるヌビアの出身でした。関西国際センターの研修生・ハッサンさんに、お話を伺いました。
「スーダンにはたくさんすばらしいものがあります。遺跡、宝物、自然、そして一番は優しく親切な人々です」と語るハッサンさん。「スーダンにはたくさんの部族が共存しています。結婚式や赤ちゃんが生まれたときにナイル川の水をかける習慣やヒエログリフのような古い文字といったヌビアの古い文化が残っている部族もあります」
現在スーダンとして知られている地域で、おもにナイル川流域に住んでいたヌビア人は、馬術で有名で、裸馬を乗りこなす優秀な騎兵でした。ヌビア語は東部スーダン諸語のひとつで、ナイロ=サハラ派の流れを汲んでいます。ヌビアの歴史は古く、30万年前の旧石器時代から始まっています。紀元前6000年ごろには、農業が行われ、エジプトとの交流が始まり、深いつながりを持つようになりました。
ヌビアという名前の由来にはいくつかの説がありますが、古代エジプト語で金を意味する「nebu」が起源という説が有力です。その名の通り、ヌビアは豊富な量の金を産出して、エジプトにとって重要な役割を果たしてきました。
?(編集部補足)ヌビアにはクシュ王国が成立したが、エジプト新王国時代には、エジプトの支配下におかれていた。その後、他国の侵攻により弱体化したエジプトをヌビア人の王が征服して、第25王朝(紀元前747-紀元前656年)を築いた。これが、「ブラックファラオ」と呼ばれる黒人の王たちの時代である。
ブラックファラオは、約100年間エジプトを支配しましたが、 最近までブラックファラオについてはあまり知られていませんでした。注目されるようになったのはこの40年ほどの間で、スイスの考古学者、シャルル・ボネらにより、遺跡の発掘調査が進んだからです。今は多くの遺跡が、水と砂の下に沈んでいます。
現在スーダンには240以上のピラミッドが残っています。スーダンの人々はこれらの遺跡を残し、古代のファラオを生んだ自国の歴史に誇りを持っています。残念ながら、ピラミッドのほとんどは19世紀に、盗掘にあったり、破壊されたりして、宝物は持ち去られてしまいました。世界遺産に登録されているナパタの神殿にある柱の浮き彫りは、王の脚しか残っていませんが、ブラックファラオは背が高く、とても強かったと言い伝えられています。
現在のスーダンも、金と石油など資源が豊富で、肥沃なナイル川周辺の平地で農業が盛んに行われています。牧畜も盛んで、化学肥料が使われていない牧草で育った家畜の肉は味も良いと評判で、巡礼で賑わうメッカをはじめとして、近隣諸国にも輸出されています。また、世界のアラビアガムの80%がスーダンで作られています。そして、スーダンは中東と西アフリカや南アフリカを結ぶ、交通の要衝でもあります。いろいろな意味で、スーダンはアフリカの重要な位置にあります。